脱ハンコで何が変わった? 2026年版・まだ印鑑が必要な手続き一覧

「もう印鑑なんて要らない時代になった」——そう思っていたのに、いざ相続の手続きや不動産の契約に臨んだら「実印と印鑑証明書をご用意ください」と言われた。そんな経験をした人は少なくないはずです。
確かに脱ハンコは急速に進みました。しかし「99%廃止可能」というのはあくまで行政手続きの話であり、民間取引や法律に根拠のある手続きでは今も印鑑が欠かせない場面が多く残っています。

この記事では、次の3点をわかりやすく整理します。

  • 脱ハンコがここまで進んだ経緯
  • 印鑑が不要になった手続きと、今も必要な手続きの一覧
  • 「まだ実印を持っておくべき理由」と備え方

脱ハンコはなぜ、どう進んだのか

脱ハンコが社会的な話題になったのは2020年のことです。新型コロナウイルスの感染拡大でテレワークが急速に広まるなか、「ほぼすべての業務をリモートでこなせるのに、ハンコを押すためだけに出社しなければならない」という“ハンコ出社”問題が物議を醸しました。
これを受け、2020年9月に発足した菅内閣のもとで河野太郎規制改革担当大臣(当時)が全省庁に対し、業務での印鑑使用を原則廃止するよう要請。同年11月には認印の全廃を発表し、「行政手続きにおける押印の99%は廃止可能」という方針が打ち出されました。

その後、2021年のデジタル庁発足を経て、各省庁・自治体での押印廃止が順次進められています。住民票の申請や婚姻届など、身近な場面でも「署名だけでOK」という手続きが着実に増えました。

印鑑が不要になった手続き・まだ必要な手続き

脱ハンコの進み具合は、手続きの種類によって大きく異なります。下の表で現状を確認してください。

行政手続き

手続きの種類 印鑑の要否 備考
住民票の写し申請 不要 マイナンバーカードでオンライン申請可
婚姻届・離婚届 不要 2021年の法改正で押印廃止、署名のみでOK
出生届・死亡届 不要 同じく法改正で廃止
確定申告(e-Tax) 不要 電子署名またはID・パスワード方式で対応
36協定届(労働基準監督署) 不要 2021年4月の様式変更で押印・署名が廃止
各種補助金・助成金申請 不要(多数) 自治体・制度によって異なるため、要確認

民間・法律に根拠のある手続き

手続きの種類 印鑑の要否 備考
遺産分割協議書の作成 実印が必要 相続人全員の実印+印鑑証明書の添付が必須
相続登記(法務局) 実印が必要 遺産分割協議による申請の場合は印鑑証明書が添付書類
銀行口座の相続手続き 実印が必要 金融機関により手続き規定が異なる
不動産売買契約 条件付きで不要 当事者双方の承諾があれば電子契約が可能(2022年の法改正以降)
住所変更登記(不動産) 実印が必要 2026年4月義務化。住所変更から2年以内に申請必須。名義変更時は実印+印鑑証明書(発行3ヶ月以内)が必要
会社設立登記 実印(代表者印)が必要 法務局への申請には代表者の印鑑登録と印鑑証明書が必要
公正証書の作成 実印が必要 遺言・離婚協議書など、公証役場での手続きに必要

ポイント:「不要になった」のは主に行政への申請・届出です。財産の移転や法人登記など、権利関係が絡む手続きでは今も実印と印鑑証明書が求められます。

なぜ相続・不動産・金融はまだ印鑑が必要なのか

印鑑には「本人確認」と「意思の確認」という2つの役割があります。

  • 本人確認:市区町村に登録された印影と印鑑証明書を照合することで、「この書類を作った人が確かに本人である」ことを第三者が確認できます。
  • 意思の確認:実印を押すという行為は、「自分がこの内容に同意した」という意思表示の証になります。万一、後から争いになった場合の証拠としても機能します。

電子署名やマイナンバーカードを使ったオンライン申請でも同様の確認は可能ですが、すべての法律・規則が電子化に対応しているわけではありません。特に相続や不動産登記は、不正や争いが起きたときのリスクが大きいため、法的根拠のある書面に実印を押す慣行が今も残っています。
政府は法改正を精力的に進めていますが、すべての関連法規の改正には時間がかかるのが現状です。

電子印鑑・電子署名との使い分け

「電子印鑑」「電子署名」「電子契約」——似た言葉が並んでいて混乱しやすいですが、法的な重みがまったく異なります。

  • 電子印鑑:PDFやWordに貼り付けるハンコの画像です。本人が作成したことを証明する機能はなく、法的な効力は認印程度です。社内の稟議書や確認書など、軽微な書類のやり取りに向いています。
  • 電子署名:電子署名法に基づく仕組みで、本人確認を経た「秘密鍵」で文書に署名します。適切に行われた電子署名は実印に相当する法的効力が認められており、クラウドサインやDocuSignなどのサービスが代表的です。
  • 電子契約:電子署名を用いて締結された契約のことです。2022年の法改正以降、不動産売買の重要事項説明書や契約書にも使えるようになりましたが、当事者双方の承諾が条件です。

つまり、「脱ハンコ=電子印鑑でOK」というわけではありません。重要な契約や行政手続きには電子署名サービスを使うか、あるいは従来どおり実印を使うかを、手続きの性質に合わせて選ぶ必要があります。

まとめ:結局、実印は持っておくべき

脱ハンコは確実に進んでいます。しかし相続、不動産、会社設立、公正証書の作成——人生の節目となる重要な手続きでは、今も実印が欠かせません。

「そのときになってから作ればいい」と考えていると、急いで用意した安価な印鑑で一生モノの書類に押印することになりかねません。
実印は一度登録すると長く使うものです。素材や書体をじっくり選んで、余裕のあるうちに準備しておくことをおすすめします。

最終更新:2026年5月
※本記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。法改正により手続きが変わる場合がありますので、最新情報は各省庁・自治体の公式サイトでご確認ください。

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