落款印(木材・石材)

落款印(らっかんいん)とは、落成款識印(らくせいかんしいん)の略で、書道や絵画、書画などの作品、書類などに押印する印鑑の一種です。 作成者の名前や雅号(がごう:みやびやかで趣がある呼び名、芸術名)、アートネームなどを刻みます。
日本の伝統文化や芸術の分野で広く親しまれ、書画や作品の署名代わりとして使われることが多く、最終的な仕上げとして押され、「完成」の印を意味します。 雅号や文字デザインを工夫することで、作者の個性や美学を表現でき、作者独自の印影が作品に刻まれることで、贋作を防止する役割も担います。

<「贋作」(がんさく)とは>
オリジナルとは別の作者が本物と偽って流通する偽物の絵画や書道なとの美術作品。 他人を欺くために作られた贋作と原作者やその関連の工房などによって正式に作られるレプリカとは異なる。

落款印をオーダーする前に、まずは選び方につてご紹介します。

落款印の種類

作者の名前が刻まれた姓名印(氏名印)、雅号が刻まれた雅号印(がごういん)または芸名印、好きな詩句や熟語が刻まれた石防印などがあります。
雅号印は彫られた文字部分が白く浮き出るように押印される「白文印」、姓名印は彫られた文字部分が赤く押印される「朱文印」が使われるのが一般的ですが、最近ではどちらでもいいようになってきています。
正式には、白文印と朱文印を組み合わせて、「関防印(引首印)」「姓名印」「雅号印』の三種類(三顆印と呼ばれる)のはんこを押します。
落款印の位置と押し方についてはこちら

姓名印

左下に押印する落款印が姓名印です。白文が一般的ですが、朱文を使われる方もいます。姓名が2文字や3文字の場合は「○○之印」「○○○印」としてバランスを整えます。

雅号印

姓名印の下に押印する落款印が雅号印です。朱文が一般的ですが、白文を使われる方もいます。雅号がない方は名のみで作成し、「印」の字は刻まれません。

関防印(引首印、冠帽印)

作品の右肩に押印される縦長の落款印が関防印で、引首印や冠帽印とも言われます。
2文字までの好きな詩句や熟語、おめでたい言葉、自戒の言葉などを刻印し、装飾的な意味や作品効果を高める目的で使用されます。 白文、朱文、どちらでも構いません。

その他の落款印

落款印には、必ず押印する三顆印以外にも、作品の空白部分ならどこに押印してもいい「押脚印」(遊印)や色紙・短冊・絵手紙に押印する「一文字印」、本の所有者を明示して紛失や未返却を防ぐための「蔵書印」などがあります。
「押脚引」には、模様や図柄、古くからひとまとまりで慣用的に用いられる成語などが刻まれ、複数押印しても構いません。

落款印のサイズ

一般的に9~30mmの正方形が使われ、作品のサイズによってどのサイズの落款印を使うか決めるといいでしょう。

用紙種類 印面サイズ
短冊 9mm
ハガキ 9~12mm
色紙 9~15mm
半懐紙 12~15mm
全壊紙 15~21mm
半切・条幅 18~25mm
聯落ち 18~30mm
全紙 20~30mm

上記参考に、平仮名の作品や文字数の多い作品には小さめの落款印を押すとバランスが良くなります。

落款印の書体

落款印の書体は、落款印の由来となった「てん書体」、てん書体から派生してできた「小篆体」、読みやすく雅やかで柔らか味のある「古印体」、威厳を感じる「行書体」、篆書体を直線的に読みやすくした「隷書体」などが一般的でおすすめです。 作風に合った書体や好みによって選ぶといいでしょう。

落款印の素材

落款印の素材は定番の石材か丈夫でコストパフォーマンスが良い「木材」(薩摩本黄楊)がおすすめです。
石材は欠けやすく実用印鑑には不向きですが、 趣味の印としてはその欠け具合が味わいとなり落款印材としてよく用いられます。

印泥とは

落款印を押印する際に使用する印泥とは、よもぎの繊維(もぐさ)や水銀朱(辰砂とも呼ばれる)、木ロウや松ヤニなどの油、ひまし油などを練り込んで作られた特殊なインクで、 中国で発明されたとされる朱肉の一種です。使用する際は、ヘラでこねて、だんご状にしてから使います。
印泥は変色や退色のしづらさがメリットですが、携帯性がなく、使用前のメンテナンスや乾くのが遅いなど実用的ではありません。 落款印用の朱肉は、長期に渡り鮮明で美しい印影を残すことができる鯱旗印肉をご利用ください。

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落款印の位置と押し方

落款印の位置と押し方

作品の左側に署名し、そのすぐ下に姓名印、雅号印の順に並べて押印、最後に作品の始まりを示す関防印を右肩に押印します。 必要に応じて押脚印(遊印)を空いたスペースに押印し、書画や日本画などの作品が完成したことを示す署名や印が押印され「落成款識(らくせいかんし)」とされます。