「印鑑って必要?」と思っていた私が、印鑑に込めた“はじまり”の話。

「実印って、いつ作ればいいんですか?」
店頭で接客をしていると、よくいただく質問です。中には、「若いし、まだ必要ないかな」と迷われる方も。けれど実印を作るタイミングに“決まり”はありません。むしろ、自分にとっての節目や大切な出来事を“かたちに残す”きっかけとして印鑑を作られる方が多いように感じます。

ある大学生の方が、「社会人になる前に、自分の名前を大切にしたくて」と来店されたことがありました。これから始まる人生の一歩に、しっかりと名前を刻んだ印鑑を持ちたい。そんな想いに、私たちスタッフも心があたたかくなりました。

実は私自身も、印鑑というものの大切さに気づいたのは、まだこの仕事を始める前のことでした。

それは、息子が生まれた日のこと。
人生で初めて“自分のためではない印鑑”を作りました。赤ちゃんの名前を彫った、たったひとつの小さな印鑑。出生届を書きながら、「この子の名前を形にして残してあげたい」と思い、気づけば印鑑屋さんに足を運んでいました。

どんな字体がいいか、どんな素材がいいか――悩みながら選び抜いた印鑑が届いたとき、胸がじんわり熱くなったのを今でも覚えています。
「この名前で生きていくんだな」
「この名前を守っていくんだな」
そんな気持ちが、朱肉の香りとともに心に広がっていきました。

あれから数年が経ち、息子は元気な小学生になりました。あの時作った印鑑は今も大切に保管しています。いつか本人が使う日が来たら、“あなたが生まれたとき、こんな気持ちで印鑑を作ったんだよ”と伝えてあげたいと思っています。

印鑑は、ただの道具ではありません。
それは、自分や誰かを大切に想う気持ちを、目に見えるかたちに変えてくれるもの。
人生の節目に。家族の記念に。自分へのエールに。
印鑑は、静かに寄り添いながら、私たちの“はじまり”を刻んでくれる存在なのです。

印鑑の種類と選び方については、 こちらで詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。

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