法人用 実印・銀行印

会社の運営や取引において欠かせない重要な法人用の実印や銀行印の選び方についてご紹介します。

個人事業主の方の実印については、個人の実印を兼用します。
個人事業主の方の銀行印についても、個人の銀行印を兼用して構いませんが、管理上やセキュリティ上、事業用の銀行口座を分けて、銀行印も別に作成してもいいでしょう。その場合は、個人用の銀行印のサイズで作成してください。

法人用の実印と銀行印の違い

法人用の実印(会社実印)は、法人を代表する正式な印鑑(印章)で、登記や契約書などの法的書類に押印することで、会社の意思決定を証明する法務局に登録された重要な印鑑です。 代表者印とも呼ばれ、法人設立時の登記手続き、不動産売買契約、金銭消費貸借契約(ローン契約など)、法務局に提出する書類への押印など重要な契約や法的手続きに使用されます。
通常回文彫りの場合、外枠には「会社名」または「屋号」、内枠には「役職名」が刻まれています。

一方、法人用の銀行印(会社銀行印)は、法人名義の銀行口座を管理するために使用される印鑑で、主に金融機関との取引に関わる場面、 銀行口座の開設・解約、預金の引き出し、口座の名義変更や住所変更、銀行取引に関する書類への押印などで利用されます。手形や小切手の発行時にも使用されるため、会社の財務管理においても非常に重要です。
銀行印は、法務局ではなく銀行に届け出た印鑑であり、金融機関との取引において法人の意思を証明しますが、実印ほどの広範な法的効力はありません。
回文彫りの場合、外枠には「会社名」または「屋号」、内枠には「役職名」もしくは「銀行之印」が入ります。

法人用の実印のサイズと形状の選び方

法人用の実印の印影サイズは法務局の定めにより、辺の長さが10mm以上30mm以内の正方形に収まる必要があり、一般的に16.5mm~25mmが推奨されます。
形状は丸型と角型がありますが、どちらでも作成しても問題ありません。 法律事務所、不動産業など威厳や堅実さを象徴する一部の業種では角型で作成されるケースが多いですが、あらゆる業種や用途にも使用できる丸型が無難でオススメです。
法務局では楕円などの特殊な形状は実印として登録できない場合があります。

法人用の銀行印のサイズと形状の選び方

法人用銀行印の印影サイズは、一般的には16.5mm~18mmの直径が選ばれ、形状は丸型、角型どちらでも問題ありませんが、円滑な取引を象徴するため丸型が主流です。 見分けがつくように、法人用の実印よりも一回り小さいサイズで作成したり、彫刻のレイアウトや持ち手の形状を変えることで見分けやすくなります。
角型や楕円型は一部の銀行では登録できない場合もあるため注意してください。

法人用の実印・銀行印の書体の選び方

法人用の実印の書体は、特に法律的な決まりはありませんが、信頼性、偽造防止、視認性などを考慮して作成する必要があります。
下記に法人用の実印におすすめの順に一般的な書体をご紹介します。

篆書体(てんしょたい)

篆書体

篆書体は、漢字の原型ともいえる古代の書体で、秦の始皇帝が中国全土で文字を統一する際に採用した「小篆(しょうてん)」を基にしています。
印鑑や書道の世界で重用されてきた伝統的な書体で、日本では特に「印鑑用の書体」としてよく知られています。
篆書体の文字は、線が均一で丸みを帯び、縦長の形状が多いのが特徴です。曲線や左右対称を意識した構造が多く、非常に美しく整った印象を与えます。 また、古典的で厳かな雰囲気を持ち、どっしりとした重厚感があります。
篆書体は、偽造防止の観点からも優れており、印鑑書体として高く評価されています。特に法人用の実印や銀行印など、公的な印鑑で使われることが多く、その格式の高さが信頼感につながります。
印相体のように極端にデザインを施すのではなく、元来の漢字の形に忠実なため、比較的判読もしやすい書体です。

古印体(こいんたい)

古印体

古印体は、江戸時代の印判師によって手彫りされた古い印章文字の風合いを再現した、素朴で味わい深い印鑑用書体です。
篆書体を簡略化しながら、線の太さや形が崩れており、かすれやゆがみ、丸みを帯びた線などが特徴で、機械的な整いとは違う、人の手による揺らぎや温かみが魅力です。 判読性も比較的高い割に、線の太さが均一でないことから偽造されにくいため、法人用の実印から銀行印、角印(会社用認印)といった幅広い印鑑で使用されています。
一部の文字(糸や竹や山)などには少し個性的な形となる場合があります。

印相体(いんそうたい)

印相体

印相体とは、主に実印や銀行印など重要な印鑑に使用される書体の一つで、篆書体をさらに装飾的に発展した書体です。
独特のデザインが施された「印相体」は、線が太く、複雑な彫りが特徴で、その文字がひと筆書きのように滑らかにつながっており、全体として模様のように見えるのが特徴です。
可読性が低いものの、複製や偽造を困難な書体のため、法人用の実印としておすすめです。さらに篆書体よりも外枠につながる形のため、他の書体よりも外枠が欠けにくい点も特徴です。
左右対称やバランスのとれた構図を重視して作られるため、見た目にも重厚感と格式を感じさせます。
古来中国の篆書を起源としながらも、日本国内で発展し、特に印章文化の中で「縁起の良い書体」「偽造されにくい書体」として定着してきました。
印影の中に吉相や風水的な要素を取り入れる場合もあり、印相学の考え方に基づき、運勢的にも良いと云われる配置の書体です。

隷書体(れいしょたい)

隷書体

隷書体は、紀元前の中国・前漢時代に生まれた書体で、篆書体よりも構造が簡略化された実用性の高い古典書体です。官吏(役人)の文書作成に使用されたことから「隷(役人)の書」と呼ばれ、後の楷書や行書の基礎にもなった、漢字書体の発展において非常に重要な位置を占める書体です。
直線と曲線が交差する、落ち着いた風格と、横画が長く、縦画が短めで、横に広がるような独特のバランス感があります。
筆使いの特徴として、「波磔(はたく)」と呼ばれる横線の両端の跳ねや払いが見られ、これが隷書独特のリズムと装飾美を生み出しています。
隷書体は、現代では印鑑書体や表札、看板、書道作品、古典的なデザインに広く使われ、 法人用の銀行印においても、古代の格式を残しながら可読性も比較的高く、デザイン性と実用性のバランスが良い書体として人気があります。
一部の文字(糸や竹や山)などには少し個性的な形となる場合があります。

それぞれの書体の特長をまとめます。

書体 偽造防止 視認性 格式・信頼性 個性・モダンさ おすすめの用途
篆書体 非常に高い 低い 非常に高い 低い 一般的な法人用実印に最適
古印体 高い 高い 高い 普通 信頼性と視認性のバランスを重視
印相体 非常に高い 低い 非常に高い 普通 格式や縁起を重視
隷書体 高い 非常に高い 高い 普通 伝統と現代の融合

法人用の実印・銀行印の材質の選び方

法人用の実印を作成する際の素材には自然素材の黒水牛や象牙、国産木材の薩摩本黄楊の他、金属素材のチタンなどがあります。それぞれの特徴をご紹介します。

象牙(ぞうげ)

本象牙(ivory)

象牙には独特の繊細な模様があり、その重量感と相まって高級感があり、朱肉との馴染みもよく印影が鮮明で、印材としては他にない最高級品です。 加工・耐久性に優れ、長期間使用しても劣化しにくく、時間とともに光沢が生まれ、朱肉を吸い上げて変色していきます。この変色は縁起が良いとされる象牙特有の現象です。
また、象牙の品質にはランクがあり、象牙の外側から内側にいくほどキメが細かくなり希少性も高くなるため高価です。 重要な法人用の実印、銀行印としても最適な印材です。

チタン

チタン(titanium)

ロケットや航空機にも使われている最先端の金属素材で、鉄よりも高い硬度で他の印材を遥かに上回る耐久性と耐摩耗性で、傷やサビにも強いため、法人用の実印、銀行印の印材としてもおすすめです。 金属ということで重量感もあり、見た目も高級感があります。
ただし、チタンは希少金属のレアメタルの一種で、その硬度の高さから加工にも手間がかかるめ、チタンの印鑑の価格は多少高価になります。

オランダ水牛

オランダ水牛(buffalo)

アフリカ全土から輸入される原材料の牛の角を利用した高級印材で、古来より「オランダ水牛」という名前で親しまれています。(歴史的背景からオランダ水牛とは言うものの、オランダ原産ではありません)
透明感があり、やや褐色の淡い色合いに「ふ」と呼ばれる縞模様が入っているのが特徴ですが、「ふ」の少ない乳白色のものや、耐久性のある中心部分の「芯持ち材」を使った印鑑は大変貴重で高価です。
弊社のオランダ水牛の印鑑は、この貴重な「ふ」の少ない芯持ち材を印材として使っています。オランダ水牛の印鑑は、タンパク質が主成分のため、朱肉のなじみも良く、印影も鮮明で美しく、法人用の実印、銀行印にもおすすめの印材です。

黒水牛(くろすいぎゅう)

黒水牛(buffalo)

タイやベトナムなどの東南アジアを原産とした牛の角を利用した印材です。象牙やオランダ水牛と同じく耐久性が高く印影も鮮明で美しいですが、価格は比較的安価でコストパフォーマンスに優れています。
ただし、印材を溶かして黒色に着色して成型しなおしている印鑑はリーズナブルですが、自然のまま印材として使った「天然黒水牛」や歪やひび割れに強く耐久性のある中心部分の「芯持ち材」を使った印鑑は、品質が高く貴重なため価格も高価になります。
弊社の黒水牛の法人用実印、銀行印は天然黒水牛の芯持ち材を印材としています。

薩摩本黄楊(さつまほんつげ)

薩摩本黄楊 つげ(boxwood)

日本で古くから将棋の駒やそろばんの珠など様々な細工物の材料としても使われてきた国産の常緑低木「柘」(つげ)。その中でも特に高品質な「薩摩本黄楊」を使った認印は、硬く緻密な木目が特徴で、鮮明で柔らかな印影が得られ、価格も手ごろなため、人気があります。
軽量で自然の木材ならではの温かみと手触りですが、硬質で耐久性があり、油や朱肉に強く、変形や割れも生じにくいです。 木材のため湿気に弱いですが、弊社の薩摩本黄楊の法人用実印、銀行印は防湿加工が施されているため、使用後はしっかりとケースで保管すれば経年劣化は最小限に抑えられます。

それぞれの材質の特長をまとめます。

材質 耐久性 印影の鮮明さ 高級感 メンテナンス性 コスト おすすめ用途
チタン 非常に高い 鮮明 高い 非常に楽 中程度~高い 長期間使用、頻繁に使用する法人
黒水牛 高い 鮮明 高い 普通 中程度 伝統的かつ実用的な選択肢
象牙 高い 非常に鮮明 非常に高い 普通 非常に高い 格式重視の法人、一生ものを求める法人
オランダ水牛 中程度~高い 柔らかい印影 高い 普通 中程度~高い デザイン性や個性を求める法人
薩摩本黄楊 中程度 柔らかい印影 中程度 やや注意が必要 低~中程度 伝統を重視しつつコストを抑えたい法人

法人の実印・銀行印の作成はハン六のネット通販がオススメです。使いやすく品質の高い印鑑をご提供しています。

法人実印Q&A

法人の実印と銀行印を同じ印鑑で作成しても問題ない?

法的効力のある法人の実印と口座の名義変更や預金の引き出し、手形や小切手の発行ができる銀行印を同じ印鑑を使うのは、 盗難や紛失時に悪用されるリスクがあるため、必ず別々に作成しましょう。

法人の実印や印鑑カードを紛失したら?

まずは紛失した旨、管轄の法務局に届け出をし、会社実印の効力を失効させます。失効の届け出には、代表者個人の実印、印鑑証明書、身分証明書が必要です。 そして、改印届を法務局に提出して、新たに準備した印鑑を会社実印として再登録します。手続きには下記が必要です。

  • 新しく登録する印鑑と代表者の個人の実印が捺印された改印届書
  • 代表者の個人の実印の印鑑証明書
  • 代理人が手続きする場合は代理人の認印

すぐに新たな印鑑が準備できない場合は、廃止手続きのみを先に行いましょう。
なお、法務局のホームページから「印鑑(改印)届出書」をダウンロードして、新しく登録する会社実印と代表者の実印を捺印、個人の印鑑証明書を法務局に郵送して手続きすることも可能です。